劣等感と闘う恋愛至上主義の心情

幼少期から始まる異性依存と、仕事における真面目ゆえの劣等感と闘う不器用な30歳の物語

曽田との出会い

その後、千尋の前に二人の男が現れる

 

拓海と曽田という男だった。

 

拓海とは、冬に出会う。

離婚をした千尋が初めての一人暮らしをし、友人との飲み会で出会う。

千尋は拓海を興味深いおもしろそうな人だと感じたが、連絡先を交換することはその日はなく、後日、友人を通して連絡をとる。

 

久しぶりのまともな出会いに千尋は心を躍らせるが、

拓海は恋愛に興味が薄い。

そこに更に千尋は惹かれる。

 

千尋は根っからの恋愛体質といえるほど、すぐに人を好きになる。

そして情深い。

 

拓海はどちらかというと恋愛にうつつを抜かす人間を嫌うタイプに千尋は感じた。

誠との不毛な関係に疲れを感じていた千尋にとって、拓海はとても魅力的に感じた。

ただ、千尋の悪い癖がでる。

拓海という存在に依存し始める。

拓海もそこに少し気づき始めて、良好かと思われた二人の関係は徐々に冷め始める。

 

千尋は、この人は自分にあまり興味がないのだなと感じた。

 

 

春になると友人との食事に思わぬ出会いが生じる。

曽田という男だ。

 

共通の友人の誕生日を祝うという集まりだった。

曽田は遅れてやってきた。

曽田は典型的な変わり者。発言が人とずれている。

しかし、にじみでる優しさが人を惹きつける。

 

話しているうちにお互いに訳有、離婚経験者であることがあり、曽田と千尋の距離は縮まる。

千尋より先に曽田が興味を持ち始める。

また食事に行こうと連絡先を曽田から聞いた。

 

千尋は、曽田への興味は当初は薄かったが、徐々に曽田の魅力に気づき始める。

曽田と二人で飲みに行くことになる。

曽田から積極的に千尋を誘う。

 

千尋はためらいつつも、曽田の居心地の良さに惹かれる。

曽田は人の話を聞くことが好きだ。人間に興味を持っていると話した。

ただ、離婚については詳しく話したがらなかった。

もう人を傷つけたり傷つけられたりするのは嫌だといった。

 

そんな曽田を千尋は大きく傷づけることになる。

どうして千尋は曽田を傷つけしまったのか。

千尋はどうして自分がこんな人間なのか、自問自答を繰り返している。

もう取り返しはつかないのに。

 

そんなことばかり考えている自分自身を攻めるしかできない。

きもちがわるい。自分と、今後もかわらないモラルの欠如した自分。

 

が嫌いだ。

9月の中旬

例年より暑さが残っている日

 

ひつまぶしを食べに車で名古屋まで

オープン時間に到着したのにもかかわらず1時間待ちという盛況ぶりだ

 

駐車場で仕事のメールを打つ誠を横目に

千尋はライブ映像をみる

 

肝心のひつまぶしは、香ばしい香りと触感が今までになく

おいしいのだが

 

最近の千尋の胃袋には、すこし多かったようだ

 

 

気を使ってなのか、本心なのか

必ず、まっとうなプランを提案してくる誠を

じれったいような、誠実なような

なんとも言えない気持ちで受け答えをする

 

しかし誠の提案で訪れる場所には

素敵な思い出ができていくものである

 

突然こみあげてくる不安や喜びに震える千尋

彼はやさしく受け入れるのだ

 

不思議な

不思議な人だと千尋は思った

不安定

 

 

「不安定なところで安定してる」

 

誠に言われて心に響いた言葉だ

 

情緒不安定な自分を千尋は知っているが、

抜け出せずもがき苦しむ中で、

そのままでいいと言われた気がした

 

千尋のこころは微動に揺れ、目が潤む感覚をおぼえた

 

人に依存しない立派な人になりたい

と思うなか、不安定な自分が見え隠れする

 

自覚することで、さらに自分をおいつめていく

 

そんなときに、それがあなたでしょ

って言われた気がする

 

言葉で包み込まれる

 

やはりあなたが最初で最後でしょうか

 

あと10年後にどうなっているのでしょうか

 

そのために働いて、準備をしておくのも

ひとつの手なのかもしれない

 

でも一番いいのは、傷つけずに一緒になれることなんだろうな

人生って人それぞれでいいんじゃないか

人それぞれの人生があると思う

幸せの定義はその人それぞれによって違うものだ

 

自分の価値観だけで人の人生にとやかく言うのは、つまらないことだと思っている

 

固定観念を捨てて、広い視野を持って、

感性を養い、おもしろい人生だったなと最後に思えたら、

満足なのかもしれない

 

人の目を気にして生きている自分がいる

ただ、最後に自分の人生を評価するのは

他のだれでもない、自分自身であろう

 

まあ、

事故などで突然死が訪れて、そんな評価をしている間もないかもしれないが

 

彼らはいったいどんな最期をむかえるのか